離発着時に電子機器のスイッチを切るのはなぜ?

みなさんのなかには「今度の旅行のチケットはインターネットで予約しよう」という人もいるのではないでしょうか。このように、パソコンや携帯電話などの電子機器は私たちの生活をとても便利にしてくれますが、実は飛行機とはとても相性が悪いことをご存知でしたか?

その原因の1つに、飛行機のアンテナがあります。飛行機には、パイロットが地上と連絡をとるための無線のアンテナや飛行機自身が自分の位置を知るためのアンテナなどが、機体の一番前から垂直尾翼のてっぺんまで各所に取り付けられていて、全体が常に大きなアンテナになっているのです。

もう一つ、飛行機に機体やエンジンの状態をモニターするためのたくさんの電気配線があることも関係しています。

ここで、理科の授業を思い出してください。電気が流れるところには必ず磁気が発生していて、この範囲のことを磁界といいます。磁界は電気の流れ(電流)の変化に応じて増減しますが、この逆で、磁界の変化するところに電流が発生することも知られています。

さて、飛行機が離陸するときや、着陸態勢に入って着陸するまでというのは、飛行機の機体にとっても、大変緊張を強いられる時間です。飛行機は自分の身体中を縦横無尽に走っている神経(電気配線)を張り詰めさせ、何か異常が起こったときにすぐにパイロットに知らせなくてはと頑張っています。パイロットもまた、異常を知らされたらすぐに対処できるように操縦に集中しています。

そんなときに、みなさんの携帯電話へ電波が飛び込んできたり、パソコンなどの電子機器のスイッチがONになると、電話の電波やパソコンから発生した磁気が、飛行機の電気系統の磁界に変化を与え、それが電気信号となって、搭載されているコンピュータに誤信号を送り出してしまう恐れがあります。

このような現象を私たちはEMI(エミ/Electro Magnetic Interferenceの略で電磁干渉現象の意味)と呼んでいます。これによってコックピットに故障を知らせるメッセージが出され、離着陸を中断したり、やり直したりする事態に発展することもあるのです。 楽しい旅の始まりのためにも、飛行機にはぜひともパソコンや携帯電話の電源を切ってからご搭乗ください。

※JALファーストクラス機内誌・JALCARD会員誌「Agora1999年2月号」より転載