寒い冬の朝、起きてみると家の窓の内側に露がびっしりと付いていることはありませんか? これは部屋の中が暖かく外がものすごく寒いとき、室内の空気が窓越しに冷やされて空気中の水分が現れてきたものです。それが「機内の乾燥とどう関係があるの!?」と思われるかもしれませんが、実は深い関わりがあるのです。
さて、機内に長時間いて「のどがカラカラ!!」という経験がある方も多いと思います。「高い場所の空気は乾燥しているから.....!?」と思われがちですが、機内の空気は、飛行中の機体の外部から入り込んできたわけではありません。飛行機の内部に設置されたエアコン(エアー・コンディショニング・システム)が、機内のすべての空気を作り出しているのです。機内の乾燥はこのエアコンに関係があるのです。
飛行機は、あるときは40℃の赤道直下の空港に降り立ち、数時間後にはマイナス50℃の上空1万mへ、と世界中を飛び回ります。しかし、こうした過酷な条件の下でも快適な「空の旅」をご提供できるよう、機内は常に一定の温度に保たなければなりません。飛行機は、エンジンが常に作り出している約2気圧、850℃の圧縮空気を膨張させることによって一番冷たい空気(約0℃)にし、この冷たい空気と高温の空気を混ぜて快適な温度の空気を取り出しています。この際、圧縮空気を膨張させると、高温高圧の空気が急激に冷やされるので空気中に溶け込んでいた水分が現れてきます。この水分をそのままにしておくと、エアコン内部で部品が錆びたり、配管がふさがれてしまいます。また、空気の温度が変わるたびに水分が現れてくる(つまり結露する)と温度の調整が非常に難しくなります。
そこで、機内の温度調整が上手に出来るように、ウォーター・エクストラクターと呼ばれる水分除去装置で、エアコン内の水分を取り除いてあげます。こうすることによって、長時間のフライトで飛行機全体が冷やされても、機体の内側で結露が発生することがなくなり、機内の温度は客室の各エリアごとに細かく調整することが可能になるのです。
機内の空気が乾燥するのは、外部の温度差の激しい飛行中でも、皆さまにとって機内を適温に保つためにエアコンや機体を結露から守るためだったのです。このため、ある程度の乾燥は避けられないのですが、快適な「空の旅」のため、機内ではお水をたくさん飲むなど、なるべく体に水分を補給してくださいね。結露って、ご家庭でもけっこう困りものですが、飛行機にとってもとても厄介なものなのです。
※JALファーストクラス機内誌・JALCARD会員誌「Agora2000年4月号」より転載