みなさんの中には、飛行機に乗って耳が痛くなった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
地上(高度0m)での強さを1気圧として示される大気の圧力は、上空へ行くに従って0.9、0.8とどんどん低くなり、たとえば飛行機の通常の飛行高度3万3000フィート(約1万m)の上空では、0.2気圧、地上の5分の1にまで下がります。もちろん、人間の体は、このような大きな気圧の変化には耐えられませんから、飛行機には、機内の気圧を調整する機能が必要になります。
では、どのようにして、この気圧の調整を行っているのでしょうか。
上空では、飛行機はエンジンから抜き取った高温高圧の空気をエア・コンディショニング・システム(エアコン)に導き、機内に送り込んでいます。しかし、それでは送り込んだ空気の行き場所がなくなり、飛行機が風船のように膨らんでしまうことになります。そのため、飛行機には、胴体の後方下部または中央左側に「アウトフローバルブ」と呼ばれる弁がついていて、バルブの開度を調整することで気圧がコントロールできる仕組みになっているのです。
さて、地上では、私たちの体は1気圧の力で押されていますが、逆に体の中からも1気圧で押し返す力が働き、体の外と中のつり合いが取れた状態になっています。ところが、飛行機の上昇で気圧が下がり、体の中は1気圧、外は1気圧以下という状態になると、体の中の空気は外へ逃げようとします。
実は、飛行機に乗っているときに耳が痛くなるのは、体の外に逃げようとする空気によって、最も敏感な器官のひとつである耳の鼓膜が動かされるためなのです。このようなとき、あくびをしたり、つばを飲み込んだり、飴をなめると、痛みがとれやすくなります。
ところで、実際の機内の気圧は、地上と同じ1気圧ではなく、約0.8気圧に調整されています。機内を飛行中にずっと1気圧にしていれば、耳が痛くならなくても済むのに・・・と考えている方もいらっしゃると思いますが、これには胴体の強度の問題があります。
地上では、機内と機外の気圧に差はありませんが、上空では0.6気圧の差が生じています。このとき、飛行機の胴体の外版が受ける力は1m2当たり6トンにもなるといわれています。つまり、機内を1気圧に保つためには、より大きな力に耐えられるよう、機体を構成している部材の強度をあげなくてはなりません。しかし、そのために外版を厚くすると、飛行機の重量が増えて、飛べなくなってしまいますから、お客様や荷物の数だけでなく、お客様へサービスする飲み物や機内食なども減らさなくてはなりません。
機内が0.8気圧に調整されているのは、ひとりでも多くのお客様に、快適なサービスを楽しんでいただくためでもあるのです。
※JALファーストクラス機内誌・JALCARD会員誌「Agora1999年3月号」より転載